「売る」から「理解する」へ ─SPORTFIVE 山田延孝氏に聞く、グローバル基準のスポーツセールス論

スポーツの現場で「営業力」というと、多くの人は熱意や粘り強さをイメージするかもしれない。しかし、世界60拠点・30競技以上を扱うグローバルスポーツエージェンシー「SPORTFIVE」でスポンサーシップセールスを担う山田延孝氏が語るのは、まったく異なる景色だ。

スポーツブランドのミズノ、渡米後のスポーツマネジメント経験という「企業がスポーツを使う側」からキャリアをスタートし、日本サッカー協会(JFA)で「権利を売る側」、そして現在のSPORTFIVEで「両者をつなぐ側」を経験してきた山田氏。だからこそ見える、スポーツビジネスにおけるセールスの本質とは何か。
2026年10月3日(土)開講のスポーツスポンサーシップ営業コースで講師を務める山田氏に話を聞いた。

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スポンサーシップ営業だけに特化した全12回・34時間の実践型プログラム。2026年10月開講・定員20名。

sporpath.com

 


経歴 ── 立場を変えながら歩んだ、スポーツビジネスの現場

山田延孝氏(写真一番左)

山田 延孝氏

SPORTFIVE ASIA PTE. LTD.
Senior Sponsorship Sales Manager – Japan

静岡県出身。東京学芸大学卒、米UMass Lowell MBA。ミズノ、Honda Estilo USAを経てJFAへ。サッカー日本代表のパートナーシップマーケティングやFIFAワールドカップ関連プロモーションを手掛け、現在は外資系スポーツマーケティングエージェンシーSPORTFIVEにて、国内外のブランドとスポーツIPをつなぐグローバルパートナーシップ事業を担う。

山田氏のキャリアは、静岡県出身、東京学芸大学卒業後、スポーツブランド「ミズノ」への入社から始まる。3年間の勤務を経て渡米し、米UMass LowellでMBAを取得しながら、Honda Estilo USAでスポーツマネジメントの実務経験を積んだ。

「元々、グローバルなフィールドで自分の力を試したいという思いがあり、それもあってアメリカに渡ったキャリアでもあります」

帰国後は日本サッカー協会(JFA)へ。ここで約7年、マーケティング部門でサッカー日本代表のスポンサーシップに携わった。役割は大きく2つ。新規スポンサーを獲得する「スポンサーシップセールス」と、既存クライアントを担当する「パートナーシップマーケティング」だ。実際の業務比重としては、国内外の大型クライアントを抱えていたこともあり、既存クライアントとのアクティベーション(権利活用)づくりが8割ほどを占めていたという。

そして2025年3月、次のステップとして選んだのが、グローバルエージェンシーであるスポーツファイブ(SPORTFIVE)だった。「企業側」「権利を売る側」の両方を経験してきたからこそ、次はその間に立つ立場で勝負したいと考えたという。

SPORTFIVEとは ── 世界60拠点、30競技以上を扱うスポーツ専門エージェンシー

Homepage

As sports marketing agency we create value for brands, rightsholders and media-platforms…

sportfive.com

 

SPORTFIVEはドイツに本社を置き、世界60拠点で活動するスポーツ専門のエージェンシーだ。山田氏はアジアチームに所属し、東京を拠点に世界各国へ飛び回る日々を送る。

事業領域は、国内外のクラブ・リーグ・協会といった「ライツホルダー」と企業の間に立ち、スポンサーシップや放映権などを通じて価値を共創すること。取り扱う競技は30以上、グローバルで数千を超えるライツを扱っており、フットボールを筆頭に野球、バスケットボール、テニス、クリケット、F1など幅広いコンテンツを網羅する。スポンサーシップ仲介にとどまらず、PGAツアーなど大会そのものの企画・運営、アスリートマネジメント、ブランドコンサルティングまで、スポーツビジネスに関わるあらゆる領域を360度手がけている。

その中で山田氏が担う仕事は、大きく3つの軸に整理される。

  • スポンサーシップセールス ── 新しい企業とライツホルダーを結びつけ、新規のスポンサーシップを組成する、最も比重の大きい業務
  • パートナーシップマーケティング ── 既存クライアントへのサービシング、契約後のアクティベーション支援
  • ブランドコンサルティング ── 特に、海外進出を目指す日本企業に対するアドバイザリー業務

セールスの捉え方 ── なぜ「理解する力」がすべてを決めるのか

ここが、今回のインタビューで最も深掘りしたいテーマだ。ライツホルダー(協会やクラブ)とエージェンシーとでは、営業の立ち位置が異なると山田氏は語る。

「私が以前勤務していた協会やリーグ、クラブといったライツホルダーは、自分たちの持つ権利を軸にセールスを行う立場にあります。一方で私たちエージェンシーは、特定のプロパティに限定せず、基本的にどのようなスポーツコンテンツも扱える立場にあるからこそ、企業側の本質的なニーズを理解し、そのニーズに合った最適なコンテンツとソリューションを提案していく。そこが、立場によるアプローチの違いだと思います」

この視点の違いは、契約に至るまでの意思決定プロセスについての考え方にも表れている。

「私たちが大切にしているのは、企業のマーケティング課題や経営課題をしっかり理解した上で、現場からボトムアップで契約をつくり上げていくプロセスです。もちろん外的要因で契約が決まるケースも多くありますが、実際に権利を活用して自社のビジネスに還元していく、現場レベルでの理解や合意形成を積み重ねていくことが、長期的なパートナーシップにつながると考えています」

では、その「理解する力」とは具体的に何を指すのか。山田氏は自身のキャリアを通じて得た最大の学びとして、次のように語る。

「スポンサーシップ営業をしていると、どうしても『売りたい』という気持ちが先行して、提案そのものにフォーカスしがちです。でも本当に大事なのは、”相手が何を求めているのか”。相対する方のニーズを理解するに留まらず、その裏側にある企業としての組織構造や経営課題まで正確に理解すること。そして同時に、ライツホルダー側の現場やコンテンツの価値も深く理解しておくこと。両方をよく理解するからこそ、より良いパートナーシップが作れると思っています」

この考え方を支えているのが、SPORTFIVE独自の「ビジネスインテリジェンス(BI)」機能だ。市場の定量・定性リサーチを内製する専門部隊があり、競合企業のビジネス概況やスポンサーシップ状況といったビックデータを分析し、クライアントの意思決定を後押しする。「自社の競合が何をしているかは、企業の担当者が一番知りたい情報です。他社の動きを踏まえて社内で意思決定を後押しできる情報を提供できることは、日本にはあまりない強みかもしれません」

だからこそ、SPORTFIVEには固定のセールスマニュアルは存在しない。「クライアントごとに、目的に合わせてスキームを組み立てています。コンテンツの知名度で売るのではなく、あくまで企業のニーズを満たすために、相手を理解した上で適切な提案ができているかどうかが全てです」

事例 ── 「理解する力」が生んだ、パートナーシップ

実際に山田氏が語ってくれた事例を見てみよう。

1
ボルシア・ドルトムント × 太陽光パネル企業(B2B)

SPORTFIVEが手がける事例のひとつが、ドイツの名門クラブ、ボルシア・ドルトムントのケースだ。ホームスタジアム「ジグナル・イドゥナ・パルク」の屋根に、あるB2B企業の太陽光パネルが設置されている。B2B企業にとってはB2C的な露出よりも、「世界屈指の集客力を誇る施設に自社製品が導入されている」という実績そのものが強力な営業材料になる。一方でクラブ側も、サステナビリティに力を入れる姿勢を体現でき、両者にとって戦略的に意味のあるパートナーシップとなった。

ドルトムント、スタジアムで世界最大級の太陽光発電。「サステナビリティ」ビジネスレセプションを開催 | Goal.com 日本

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www.goal.com

 

2
アディダス × JFA「HER TEAM」

一方、山田氏自身がJFA在籍時に間近で見ていたのが、アディダスとJFAによる長期的な共同プロジェクト「HER TEAM」だ。女子サッカーの競技人口減少という社会課題に向き合い、中学進学を機に女子サッカーを続けられなくなる選手が多いという課題に対し、女子クラブの創設支援やユニフォームの無償提供、大会運営などを継続的に行っている。単なるブランド露出にとどまらず、社会課題の解決そのものを実現できる点に、スポンサーシップの可能性の大きさが表れている。

5年間で全国88チームが誕生 6年目の取り組みで女子サッカーの未来を加速 アディダス・JFA共同プロジェクト「HER TEAM」2025年度募集開始

アディダス ジャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:萩尾孝平)と、公益財団法人日本サッカー協会(所在地:東京都文京…

www.jfa.jp

 

スポンサーシップの醍醐味 ── 「勝敗を超えた価値」をどうつくるか

「企業の課題とスポーツの価値をつなぐ仕事」

これが山田氏の語るスポンサーシップの醍醐味だ。

「スポンサーシップから生まれる価値やアウトプットは100通りも1000通りもある。企業の課題を解決しながら、一緒に新しい価値をつくっていくプロセスそのものが面白いです。契約して終わりではなく、その先に企業と一緒に実現していく未来まで想像できると、なおさら楽しい仕事だと思います」

一方で、スポーツには勝敗や怪我といった不可避の不確実性がある。この難しさについて山田氏はこう語る。

「もちろん、チームが強くなる、選手が活躍するという結果への期待は前提としてあります。ただ、それだけを目的にしたスポンサーシップでは、結果が伴わなかったときにそれぞれの想いに軋轢が生まれる。契約に至るまでの過程で、勝敗を超えた価値をきちんと理解してもらい、その価値を軸にしたパートナーシップを築けるかどうかが、それが私たちセールスにとって大切なことだと思っています」

セールスの本質を、体系的に学ぶには

「相手を理解する力」「自分たちの価値を理解する力」──山田氏が語るスポンサーシップ営業の本質は、スポーツ業界に限らず、あらゆるB2B営業に通じる普遍的な考え方だ。しかし、こうした視点は経験の中でしか磨かれないと思われがちで、体系的に学べる機会は多くない。

山田氏は、Sporpathが開講する「スポーツスポンサーシップ営業コース」の後半、Professional Moduleで講師を務める。第10回「グローバルスポンサーシップの最前線」では、今回の取材でも触れたSPORTFIVEでの実例を交えながら、グローバル市場の最新潮流と、海外の先進事例から日本のクラブが持ち帰れる発想を伝える。続く第11回「ケーススタディ&実践ワーク」、そして最終回の第12回「企業担当者への実践プレゼン&フィードバック」では、受講生が自ら作成した提案書を実際の企業担当者にプレゼンし、直接フィードバックを受ける実践の場を、講師として支える。

Sporpath Learning プロフェッショナル養成講座 -スポーツスポンサーシップ営業コース-【2026年10月開講・第1期生募集】

スポンサーシップ営業だけに特化した全12回・34時間の実践型プログラム。2026年10月開講・定員20名。

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受講を迷っている方には、担当者と1対1で話せる無料の個別相談(約30分)も用意されている。その場で申し込みを迫られることはないので、「自分のレベルで付いていけるか不安」「クラブ単位での受講を検討したい」といった方は、まずは気軽に相談してみてほしい。

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